2025、7、6       聖霊降臨節第5主日礼拝       牧師 川﨑善三 

「金の笏」                       エステル記4:4~11

 旧約聖書のエステル記の位置は、バビロン捕囚のあと、ペルシャ帝国が世界規模の大帝国になっていくとき、その王アハシュエロスの世に起こったドラマチックなお話であります。この話には、四人の人が登場してまいります。アハシュエロス王と王妃エステル、エステルの養父モルデカイ、大臣ハマン、この四人が登場人物であります。王はその絶頂期にペルシャとメデヤの将軍、貴族、大臣たちを招いて、盛んな酒宴を設けました。王は、ペルシャ帝国の威光を、世の人々に示そうとしたのです。「七日目にアハシュエロス王は酒のために心が楽しくなり、王妃ワシテに王妃の冠をかぶらせて王の前に来るように」と言いました。ところが、王妃ワシテはこの王の命令を拒みました。王は大いに憤り、その怒りが彼の内に燃えました。王は知者に相談し、ワシテを王妃の位から退けて、新しく王妃を選ぶことにしました。そして、国中から集められたおとめたちの中から、選ばれたのが、エステルでありました。ここから、この話が始まることになりました。王は、アガグびとハマンを重んじ、異例の昇進をもって、彼をすべての大臣の上にその席を定めさせました。ハマンの心は増長し始めました。ハマンは自分にひざまずかず、また敬礼しないモルデカイに対して、怒りを持ち、その心は殺意にまで発展していきました。モルデカイは、自分はユダヤ人であるから、人を拝むということはしないと、周りの人々に話していました。ハマンは、ただモルデカイだけを殺すことはせず、モルデカイの属する民、すなわちすべてのユダヤ人をことごとく滅ぼそうと図りました。ハマンは王に言いました「お国の各州にいる諸民のうちに、散らされて、別れ別れになっている一つの民がいます。その法律は他のすべての民のものと異なり、また彼らは王の法律を守りません。もし、王がよしとされるならば、彼らを滅ぼせと詔をお書きください。そうすれば、わたしは王の金庫に、銀一万タラントをいれましょう」王は、ハマンの言うことを信じ、それを許し、ハマンの陰謀は成立してしまいました。モルデカイは、その事を知ってエステルのもとに使いをつかわしました。「あなたは、王宮にいるので、他のユダヤ人と異なり、難を免れるだろうと思ってはならない。あなたがもし、このような時に黙っているならば、ほかの所から、助けと救がユダヤ人のために起こるでしょう。あなたがこの国の王妃になったのは、このような時のためでなかったとだれが知りましょうか」エステルは、この言葉を聞いて、意を決してモルデカイに答えます「わたしのために断食してください。三日のあいだ夜も昼も食い飲みしてはなりません。そして、わたしは法律にそむくことですが王のもとに行きます。死なねばならないのなら、死にます」イエスは言われました「自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために自分の命を失う者は、それを救うであろう」(マルコ8:35)私たちは、いざという時、神様のために命を捨てる覚悟があるでしょうか。「死ななければならないなら、死にます」このような信仰の言葉を、神は待ち望んでおられます。